化学系学科比較

東大には「化学」の名を冠した学科が多く存在するが、各学科の違いはあまりよく知られていない。

そこでこのページでは、化学系学科志望の東大生がおそらく初めに存在を知るであろう「理学部化学科」を皮切りに、東大に存在する「化学系」学科の比較をしていく。

学部 学科・コース 簡単な違い
理学部 化学科(りばけ) 化学全般
工学部 応用化学科(応化) 無機・有機分子
化学システム工学科(化シス) 化学工学的速度論
化学生命工学科(化生) 有機合成・バイオ
薬学部 薬科学科・薬学科 くすり
工学部 マテリアル工学科(マテ工) 材料工学
農学部 応用生命科学課程 生命化学・工学専修(農2) 酒・農芸化学
理学部 生物化学科(せいばけ) 分子生物学
教養学部 統合自然科学科 物質基礎科学コース 教養

※この記事は実際の学生の意見を元にして書かれていますが、万人の意見とは必ずしも一致しないかと思います。このページの記述に賛同しかねる点がある場合には、こちらのページの通りメールでお知らせください。

理学部化学科

理学部化学科(りばけ)は、優秀な理系のマインドを持った人たち、すなわち「闇を自身の内に受け入れ、ネタとして昇華できる」人たちの集まりである。一言で言うと「ホムラチャンウィティヒ...」ということである。

りばけにおいては、「化学」という言葉から連想される分野はほぼ網羅されている。ざっと研究室を列挙しておくと、物理化学(構造化学・物性化学・量子化学・化学反応学)、有機化学(生物有機化学・有機合成化学、天然物化学、物理有機化学)、無機分析化学(固体化学・分析化学・無機化学・生物無機化学)といった感じ。以上分類は学科サイトからの引用だが、無機に分類される研究室でも有機をバリバリやってるなど、幅広い知識を身につけることを要求される。化学全般に興味があって迷っているなら、りばけにしておけば安心。

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りばけはブラック?

りばけ民たちはいつもブラックブラック言っているが、その通り本当に忙しい。客観的事実として忙しい。課題も実験も多い。土曜日にも授業がある(基礎化学英語演習)。実験は週5(3年の午後はすべて実験)で、特に重視されている。

りばけは真面目系クズには生きにくい学科であり、完璧超人か怠け者(要領のよい人)しか生き残れない。「りばけの生活がつらい? ジョジョ、それは無理にフル単しようとするからだよ。逆に考えるんだ。落としちゃってもいいさと考えるんだ」

しかし念のため補足しておくと、りばけ民は自ら好んでこの生活に身を投じた人たちである。りばけに限らず、理学部の学科はどこも実験が多く、研究室でも夜遅くまで実験していることが多い。しかしこれは学生が自主的に、好きでやっていることであって、決してりばけ、ひいては理学部が「ブラック」というわけではないのだ。

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応用化学科との違い

結局、理学部か工学部かの違いに行き着くと思われる。とにかく化学を詰め込まれるのが、りばけ。対象とするのは主に基礎研究。一方の応化などの工学部化学系学科は、それを工学的にどう応用していくかを見据えて、メニアックな部分は適宜カットしつつ化学を学んでいっている印象。

理学部化学科と工学部応用化学科で迷っている人は、両学科の研究室ページもくまなく見て、より自分の興味に近い研究をやっている学科を選ぶとよいかと思われる。

化生系3学科と理学部化学科の違い」も参照。

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公式リンク

東京大学大学院理学系研究科化学専攻 理学部化学科

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工学部化学・生命系3学科

工学部の応用化学科(応化)・化学システム工学科(化シス)・化学生命工学科(化生)の3学科は、まとめて「化学・生命系3学科(化生系3学科)」と呼ばれ、カリキュラムが非常に似通っている。

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応用化学科・化学システム工学科・化学生命工学科の違い

応用化学科(応化)

無機化学・有機分子(有機合成ではない)を主に扱う。化生とは違い、有機化学は環境関係に力を入れている。

化学システム工学科(化シス)

化学工学に関わる速度論(化学プロセス。化学工場・プラントの中でどういう風に物質が動くか、触媒を作ってどれくらい効率よく反応が進むか、など)、材料(電池、医療用高分子)、計算機科学(量子化学計算、プラント内の流体力学シミュレーション)を主に扱う。

化学生命工学科(化生)

有機合成とバイオを主に扱う。「化学と生命がやれる」と宣伝されてはいるが、片方しかやっていない研究室が圧倒的に多いので注意。応化とは違い、有機化学は合成・反応開拓がメイン。応化・化シスが実用段階に至るまでの研究や、既存プロセスの改善の研究を主に行うのに対し、化生は、例えば「新しい有機材料を作ろう」といったように、基礎研究を主に行う。

カリキュラムの違いはあまりなく、かなりの講義が被っている。例えば応化は、約半分の講義を化シス・化生と合同で、約1/4の講義を化シスまたは化生と合同で行う。学生実験の内容も同じ(ただし、生命科学実験及び演習は化生のみ必修。つまり、応化・化シスは3年冬学期の1/3は実験がないが、化生はある。もちろん応化・化シスの学生もこの実験を履修することはできる)。

よって研究室、またどの学科を出れば自分の目指す将来に近づくのかを考えて学科を選択する必要がある。まあ院で選び直すことも(ry

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化生系3学科と理学部化学科の違い

闇度が大きく異なる。

研究室

りばけで一緒くたに「化学」としてやっているものが、工学部では3つに細かく分かれている。

研究室の数は工学部の方が多いので、自分の興味に近い研究室が見つかるかも……?

カリキュラム

工学部では数学・数理手法や化学工学も学ぶが、りばけでは学ぶ機会は少ない。また、りばけでは化学工場見学や、化学工学の最先端で働いている人を招いたオムニバス講義・講演会などの機会は少ない。しかしりばけではこれら工学部っぽい授業がない代わりに、「○○化学」を多く、かなりしっかりと学んでいる(シラバス等参照)。

負担

実験・レポートの負担は工学部の方が少なめ。

工学部は面倒見がいい方。一方のりばけは放任主義的で、自力での学習が推奨されている印象。

化学生命系の実験は週3(3年午後)。りばけは週5。

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公式リンク

応化:東京大学大学院 工学系研究科 応用化学専攻 東京大学 工学部 応用化学科

化シス:東京大学化学システム工学

化生:Chem & Biotech(東京大学工学部化学生命工学科)

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薬学部

薬学部は化学系ではなく「薬学系」と言った方が適切だろう。すなわち、薬を作るための学部である。

有機合成の研究室もあるにはあるが、薬学部の中ではマイノリティ感。あくまでメインは「"薬"学」であり、有機合成も「薬科学」としての位置づけな感じ。

薬学部には以下の2つの学科が存在する(4年から。進振りでは両学科合わせて募集)。

薬学科

薬剤師コース。6年制。

薬科学科

4年制。薬剤師になるのはかなり大変。アカポスもきつい(薬剤師の資格がないと薬学部の教員になるのは厳しい)。

学部の雰囲気は、とてもフレンドリー。縦のつながりおよび横のつながりを強化すべく、2・3年生が一緒にスキーに行ったり、3年になったら水上運動会を開催したりする。学部の人数は80人と多いけれども、一緒に作業する機会が多いので、非常に仲が良い。理系的なマニアックな部分とウェーイがうまく融合しており、生物的なシモネタに女子学生がまじめにツッコミを入れてくることもしばしば。

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化学生命工学科との違い

薬学部では「薬にまつわること」を学ぶ。バイオの授業が多い。有機化学もひと通りは習うが、なんだかんだで生物をメインに学ぶことになる。一方の化生はどちらかと言えば化学をメインにやる。

製薬会社への就職を考えている場合、薬と化生どちらが有利かとは一概には言えない(近年は、工学博士や理学博士も採っている)が、薬学の方がOBもいっぱいいるだろうし、有利ではないかと思われる。

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理学部化学科との違い

薬学部の研究室は「有機薬科学」「物理薬科学」「生物薬科学」「創薬学」「医療薬学」「社会薬学」といったカテゴリーに大別される。見ての通り、主に薬にまつわる研究である。おそらく化学がやりたくて薬学部とりばけを迷っている学生なら、りばけに行っておいた方が(個人的には)無難なのではないかと思う。「有機合成なら薬学部」という意見も根強いが。まあともかく、パンフレットなどで薬学部やりばけの研究室紹介をよく見て、研究内容を把握した上で判断してほしいところだ。あと、薬学部に来るのに生物まるでダメですというのはちょっと厳しいかもしれない。

ちなみに、薬学部の学生実験は週5だが、レポートはなんだかんだで楽。りばけの方がよっぽどきつそう。

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博士課程への進学

薬学部(薬学系研究科)は博士課程進学率が高く、約5割の学生が博士へと進学する(化生は2~3割、りばけは3~4割)。これは製薬会社が博士課程の学生もきちんと(優先的に)採用してくれるという事情もあるが、なんだかんだで製薬や化学工業系のところぐらいしか行く所がなく、進学せざるを得ないといった事情もある。

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公式リンク

東京大学 大学院薬学系研究科・薬学部

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マテリアル工学科

最初に言っておこう。マテ工では化学はできない。無機・分析などをやろうと思っても、マテではできない。

マテ工は、どちらかというと数学・物理寄りの学科であり、化学の実験もあるにはあるのだが、ほとんどやらない。物理、特に材料力学チックな実験が多い。ゆえに化学がやりたくてマテに来てる人は少ない。

材料は材料でも、扱うのは原子の構造とかではなく「バルク」である。つまり、金属の強度がー、破断がー、ヤング率がー、とかいう話をすることになる。元冶金学科(チキンじゃないよ)なので、まあメインは金属材料だよね、といった感じである。

バイオマテリアルコース(マテ工A)

いかにも「バイオ」ができそうなコースであるが、バイオの要である「分子生物学」を化学生命工学科の教授が教えているなど、バイオを学ぶ環境は整っていないと見た方がよい。「バイオやるぞー」と思ったら力学とかをやらされ、コレジャナイ感を味わうことになる。

環境・基盤マテリアルコース(マテ工B)

なんといっても鉄鋼。

たたら製鉄を祖とする鉄鋼業は元々環境を破壊してきた側だろうに、青々とした森林写真を背景に掲げ「環境」を推してくるとはとんだ皮肉である。

ナノマテリアルコース(マテ工C)

半導体やセラミック。

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公式リンク

東京大学マテリアル工学科

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農学部 応用生命科学課程 生命化学・工学専修

「生命化学・工学専修」という名前は、大学院が「応用生命化学専攻」と「応用生命工学専攻」の2つに対応していることに由来する。かつて「農芸化学科」と呼ばれていた通り、有機化学なら植物ホルモンの人工合成、分析化学なら生体内の重金属の動向といったように、「人類の生存を支えるバイオサイエンス」を掲げつつ、その根底には「農芸化学」の理念が流れている。「農芸化学」とは何かを駒場生に伝えるのに「酒」という手段を用いたために、今日でも「お酒を作るための学科」との称号がある。

したがって化学をやるにしても、生命科学が必ずつきまとう。むしろ生物系の基礎が全くないと著しく詰む。

闇度は、りばけの足元にも及ばないほどホワイト。

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化学生命工学科、生物化学科との違い

名前が似てるだけ。

農2(生命化学・工学専修)は、酒に代表されるバイオサイエンスという名の農芸化学を中心に研究する専修である。

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公式リンク

応用生命化学専攻・応用生命工学専攻(東京大学大学院農学生命科学研究科)

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理学部生物化学科

「生物 "化学" 科」と化学の名を冠してはいるが、基本的に生物。「生物なんだけど、ツールとして化学を使う」といった感じである。生物化学科は、元々「分子のレベルから生命現象を理解する」ことを目的として設立された学科であり、研究対象は分子・遺伝子レベルの生命現象に関わる分野である。別名「分子生物学科」。

学生が少なく、15~20人程度。ほとんど理二。「さあ一限だー」と思い授業に行くと、数人しかいないなんてことも(ry

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化学生命工学科、生命化学・工学専修との違い

名前が(ry

生物化学科は、分子生物学を中心に研究する学科である。

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公式リンク

東京大学大学院理学系研究科 生物化学専攻

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教養学部 統合自然科学科 物質基礎科学コース

駒場の基礎現代化学や構造化学、物性化学でお馴染みの教授陣に会える!

駒場の名物授業「ALESS」がもう一度ならず、もう二度も履修できる(Advanced ALESS)!

シケプリ・過去問がほとんど集積されていないので、自ら考えて勉学することができる!

進振りの底点も低い! というか底割れなので、無意味な点数競争に参加する必要もなし!

――実際、ものすごく興味のある研究をやっている教授がいるならともかく、点数が足りるなら本郷の学科に進学した方がいいと思う。同年代の化学の天才たちと交流を深めつつ、しっかり化学を学んだ後、院から教養(総合文化研究科)に来ても遅くはない。

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公式リンク

物質基礎科学コース - 統合自然科学科コース紹介 - 学科紹介 - 東京大学教養学部統合自然科学科

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